平日夕方6時10分からのNHKニュース番組『ロクいち!福岡』の1コーナー「西日本の旅」取材班が田主丸を訪れました。2019年4月11日シクラメン・アジサイ生産家『坂本植物園』さんの取材に私も同行。坂本植物園さんは「花の国づくり共励会 花き技術・経営コンクール」農林水産大臣賞受賞など全国でも有名な鉢物栽培家。取材風景も面白かったですが、そこに働く方々の溌剌とした姿が印象に残りました。その模様をお伝えします。
ダンディで落ち着いた雰囲気の社長・坂本和盛さん
雨にぐずいついた昨日をまだ引きずった空模様ながら日差しが戻り、新緑も瑞々しい耳納山。その山の麓、久大本線のすぐ傍に『坂本植物園』はあります。幾つもある大きなビニールハウスの一つで、NHK取材班と打ち合わせをする坂本植物園・坂本和盛社長を見つけました。スリムジーンズを着こなし、笑みを湛える姿がとても魅力的。収録本番でも、終始、コーナー担当の庭木櫻子アナウンサーに、丁寧に分かりやすく説明されました。自然と坂本社長の周りに人が集まってくるような優しい雰囲気に満ちていました。
アジサイにも負けぬ華やかさで働くパートの皆さん
ハウスの外に置かれた台車にアジサイを運び出す作業となりました。アジサイ鉢の入ったトレーをバケツリレー式で次々と流し、最後は抱えて台車に載せていきます。台車の上の棚は女性の頭ほどの高さですが、そこへトレーをスイスイと並べます。4つの鉢を載せたトレーは重さ10㎏。台車はトレーで一杯になるとすぐに動かされ、そこへサッと次の台車が。こうして今日は300前後の全国各地向けのトレーが短時間で搬出されました。
華やかさは、その後も続きます。今度は、搬出して空いた場所を、開花前のアジサイ鉢でどんどん埋めていきます。そして、先ほどまでピンクや赤の花で飾られていたハウスが、瞬く間に爽やかな緑に満たされました。
鉢物栽培の面白さは、ゲームパズルを解くような醍醐味
先ほども搬出して空いた場所は遊ばせず、すぐに次の開花を待つ鉢を移動させましたが、常に需要に応じて出荷できるようハウス毎に気温差を付けて、コマ目に鉢を生育状況にあったハウスへ移動させます。母の日が近けば、今日の3倍以上の出荷量となるため、出荷数日前から作業手順を調整するそうです。一方、出荷作業に押され、苗の準備に割く時間の確保が難しくなります。そこで、1年半ほど前から繁忙でない時期に段階的に苗を育て始めるそうです。
坂本社長は、シクラメン栽培34年、アジサイ栽培28年の間、時間と場所を無駄なく様々な作業を組み合わせる工夫を続けてこられたそうです。場所や時期の他にも、シクラメンとアジサイの割合、各々の花でも育てる品種の割合、人の配分など考えることは沢山。
しかも、坂本社長は直接取引でなく、市場でのセリ売りにこだわっています。セリ売りの中で、栽培した花が本当に需要に合っているのかを見極めるのです。競合者に負ければ、また奮起し今まで築き上げてきた栽培手順を考え直します。
一つの作業に支障があると全てが台無しになり、無事に開花に辿り着いても市場に受け入れられないこともある。社長は、悩ましい幾つもの課題を解決しなければなりません。しかし、坂本社長はそれが面白いのだ、と笑顔で話されます。そこにゲームパズルのピ-スを次々と組み合わせていくような醍醐味があるのだ、と。
こうした前向きな姿勢と弛まぬ工夫の連続が、2017年度「花の国づくり共励会 花き技術・経営コンクール」の農林水産大臣賞受賞という輝かしい結果につながったのです。受賞理由は、高温多湿など条件が激しい九州で作業効率の高いシクラメン栽培環境を整備し高品質化を実現したこと。まさに、鉢物栽培という高難度のパズルを解いた坂本社長への大きなご褒美と言えるでしょう。
今日もきっと坂本社長は、耳納山の美しい景色を眺めながら、新たなパズルを楽しんでいるはずです。
インフォメーション(放映予定など)
今回の取材の模様は、2019/4/18(木)18:10からのNHK『ロクいち!福岡』の中で放送予定です。坂本植物園の他にも、田主丸の様々な場所が紹介されます。ご期待ください。坂本植物園さん 福岡県久留米市田主丸町地徳2039。通常は一般公開していませんので、ご注意ください。
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